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2009.12.03

再び...

42位
数字だけではわからない事がある。
マシンを復旧後様子を伺うように第2ライダーが走る。
タイムが思うように上がってこないのでマシンが
本調子ではないのか?
20分くらい走行したらコースに広い範囲でオイルが
出たらしく急に転倒者が続出。
今回初めてセーフティーカーが入った。自分たちの
チームではないか?緊張が走る。
ピット前を通過するときオイルが漏れていないか
凝視する。特に問題はなさそうだがペースカーの
入っている時間が長く、しかもスローペースなので
ライダーはしんどい。そして時間が経ったので
第2ライダーに交代。最後の給油だ。
「とにかく確実に」ピット作業の鉄則だ。
焦ってミスったりすると逆に時間を費やす。
給油・ライダー交代までうまくいったが
エンジンがかからない。やな感じだ。
ライダーから交代してエンジンをかけるが
一向にかからない。押しがけもしたがダメだ。
ダメな原因を調べる為、外装を外す。
さっきトラブルになったところを見る。
残り1時間焦る。
さっきまで走っていたのに...

そう思うとますます原因が全くわからない。
今回は思い込みでキャブを分解したり
さっきの作業ではヘッドカバーを開けてみたり
やはり”焦って”時間を費やしていたのだ。
時間がどんどん過ぎていく。
点火しないので逆に今できることは何だ?と考え
換えられる電気部品を交換することに。
といってももうスペアなどない。
あったのは中古のCDI。
これでダメなら本当にリタイアだ。
仮付けでプラグをスパークさせてみる。
わずかだが火が飛んだ。
プラグをはめてキックでエンジンをかける。
かかった!残りわずか30分。
再びコースイン。
コース上には10:40分のスタート直後よりも
台数が少ない。日も傾き15:40 チェッカーフラッグ!

しぶとくピット作業しただけあって5時間走って
ゴールした最後のチームだ。
今回は順位以上に学んだ事がたくさんある。
現場じゃなきゃ学べない事がたくさんあった。
また少しスキルを上げる事が出来た。
このことは仕事にもフィードバックしていきたい。
そして、来年”再び...”

2009.12.02

復旧

1コーナーゲートからマシンを出すと
ピットから救援部隊が...
みんなは何が起きたか把握できていない。
ガス欠?最終コーナーで撮影していたお客さんが
スロー走行になったところを見ていたようで
転倒ではない事はわかっていたようだが
マシンの状態は伝えたいが伝えにくかった。
とりあえずピットにもどり修復作業に入るが
自分には”駄目出しの作業”になるのではとネガティブな
気持ちでいつもは軽くまわるTレンチが重く感じた。
今考えるとなぜヘッドカバーを外したのか?
ヘッド周りが痛んでいれば確実に復旧は無理だ。
駄目を確認する作業だからTレンが重いのか...
走行直後だけにストーブのように熱いヘッドカバー。
外してみると異常なところがない。
止まったときの音からすると何か折れたような
音だったのでバルブがピストンにヒットしたか
コンロッドが折れたか重大な損傷が考えられた。
コースで止まったときにマシンを置いて帰るか
押していくか判断するときに再始動をしようか
悩んだが大きな破損をしていた場合ますます
痛むので戻って確認してからにしようと思う反面
心のどこかでわずかな望みを期待してマシンを
押して帰ったのかもしれない。
ヘッド周りが生きているのを確認すると
わずかな望みが急に大きな期待に変わる。
ペアライダーが左のエンジンカバーを外した瞬間
そこにいたメンバーに衝撃が。

フライホイールがパックリ割れている。

驚いたメンバーとは逆に虚しさから急に解放された
自分がいた。今できることをやろう!
グランドスタンドにおかれた競技用の時計には
残り時間が表示されている。残り2時間半。
いまから修復すれば2時間は走れる。
通常はリタイアになってもおかしくはないが
直る見込みがあった。まずはこの部分を外すには
特殊工具がいる。今回は長丁場だったので普通の人が
持ってこない道具に重点をしぼって持ってきていたのだ。
まさか自分が使う事になるとは思ってもいなかったが...
そしてこの破損したフライホイールを調達しなくては
ことは始まらない。何チームかスペアバイクらしき
バイクを持ち込んでいるところがあったので
確保しに行ったところ2つ隣ピットに知り合いのチームいて
快く貸してくれた。思ったより早くパーツの確保が出来たが
ココで問題が。この部品を押えているナットが64Nmとかなり
固く締まっている。そのため特殊工具で保持するのだが
保持したところで割れているので空回りしてしまうのだ。
耐久レースなのでエアツールで外す事もできない。
残す手段は反対側のカバーを開けてプライマリギヤを
止めているナットを押えるしか方法がない。
プライマリギヤを止めているナットは39Nmなので
こっちが緩む可能性もあるが悩んでいる時間はない。
ワイヤリングを外し、エンジンオイルを抜き右側のカバーを
開ける。

全ての部品が熱い。22mmのメガネレンチで
ナットを押さえフライホイール側のナットを緩める...
慎重にゆっくりと
外れた!そしてもうひとつの特殊工具で残った部品を外し交換。

これで走れる!エンジン始動でキックを繰り返すが
かからない。フライホイールが割れたときに周囲にあった
ステーターも破損していたのだ。もう一度フライホイールを
外しステーターも交換。「今度こそかかってくれ!」
キックをおろすと勢いよくエンジンに火が入った!
外したワイヤリングをやり直し、外装をつけ
いよいよコースに復帰だ。

だいぶ遅れてしまったが気持ちを入れ替えゴールを目指す。
残り2時間...そして再び

2009.12.01

試練

今回の”耐久茶屋”はある意味耐久だった。
暑い鈴鹿8時間耐久などに比べたら大げさかもしれないが
記憶に残る苦いレースとなった。
今年から5時間と長丁場になり過去の3時間より
マシンントラブルが心配で望んだ”耐久茶屋”
事前の練習も積み、トレーニングもし順調に望んだのだが
それは”突然”やってきた。
朝の車検からスムーズに準備が進みいよいよ決勝レース。
くじ引きでグリットは後半スタートになったものの
第1ライダーのオーナーである王様がスタートダッシュをきめ
その後もバトルを繰り返しながら先行するマシンをパスし
予定通り第2ライダーに交代。

耐久走りで1時間経過して53番グリッドから20位前後まで
ポジションアップ。

”秀吉走り!で耽々と上位を狙う。
そして給油。思ったより消費が少なく少々あふれたが
すぐに拭き取り第3ライダーである自分が出走。
練習で転倒しているのでかなり慎重に走った。
まだ2時間経っていないがコースのいたるところに
転倒したマシンが立てかけてあり、ピットまで押している
ライダーもいた。コース上もオイル処理の石灰のあとが多く
ますますバイクが寝ない(バンク出きない)
それでも自己ベストより1秒オチくらいは保ちたかったので
1周目からプッシュ。いい感じですぐにタイムが上がってきたが
1コーナーから1ヘアピン、そして最終コーナーで
目の前のライダーが転倒していく。
すぐに回避するも失速する間に後続に刺される。
いつもの練習より1周に神経を使うので時間が経つのが遅い。
今回は50分交代。裏のストレートではマシンの状態を
少しでも知る為、油温チェックでデジタルメーターとにらめっこ。
その時、時計も目に入ってくるのでますます時間が長く感じる。
走行して20分すぎたあたりでコースの状態も把握でき
イエローフラッグもあまりでなくなり安定したタイムを刻もうと
バックストレートから最終コーナーへ向かうところで
突然、パキーン!と音がしたと思ったらタコメーターの針が
12000rpmからストーンと一番下まで落ちエンジンストップ。
ストレートエンドだったので後続に追突されないように
ギリギリ端までよけるが頭の中は”真っ白”
そのまま惰性でスポンジバリアーの方へ...
自分で組んだエンジンなのでエンジンストップ時の
音からしてリスタートは難しいとすぐわかった。
それでもスポンジバリア脇をひとりマシンを押していた。
今回は1秒も無駄にしないよう直前の練習でも
給油練習などしてとにかくロスしないようにと細心の
注意を払ってきた。普段は思いっきり走るところを我慢して
耐久走りでで第1・2ライダーが走っていたので
マシンを押している自分がとても虚しかった。
みんなが神経を研ぎ澄まし節約した1秒を
自分がマシンを押している間に使っている気がした。
同じ1秒でもイコールではないのがわかるだけに身に染みる。
さらに色々な事が頭をよぎるがプラスな要因がない。
少しでも早く押して帰りたい気持ちと裏腹に
この位置からピットにもどると3周減算されること、
そしてこのマシンはもう走ることが出来ないと思うこと...
それでも押していた。

しかしマシンはミニバイクなので重くはないが
妙に軽くコース脇を進めることができた。
最終コーナー入り口から1コーナー入り口のゲートまで
どれくらい時間がかかったかわからないがこのとき
自分の時計はすでに止まっていたのかもしれない。

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